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焦点距離と画角

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 この2枚の写真を撮った時の状況を説明すると、まずこの場所で撮ったのが左の写真。そして「なぜ望遠で撮ったのか」と訊かれたので、モデルの大きさが同じような感じになるように近づいて広角で撮ったものが右の写真。
 焦点距離でいうと35mm版換算で左は約70mm、右は約40mm。ちなみに前出の『ポーズと構図』で撮った写真は、この写真よりも後に参加者の方が撮られたさらに後に撮ったもので左右とも約60mmだった。カメラの高さはいずれもウエストレベル(腰位置ぐらいの高さ)だ。

 つまりこの写真は、左が『やや望遠』、右が『やや広角』で撮った写真と言える。
 これも同じように左右どちらが良い悪いではなく、焦点距離(画角)違いで画が変わるというものだから、左右片方ずつ隠してそれぞれの写真で感じたイメージを書き留めてみるとよいだろう。

 さらに前出の『レンズを知ろう』と同じ効果があるのも見て確かめてもらいたい。
 焦点距離が短くなればなるほど(広角になればなるほど)レンズの位置から近くにあるものは大きく遠いものは小さく写るので、パース(遠近感)が強くなる。右写真と比較しながら左写真のモデルだけを見るとスタイルよく少し迫力や威圧感があるように感じないだろうか。細かく見ていこう。ウエストレベルで撮っているので、腰を中心に頭の先や足先に向かって伸びたように写っているのが判るだろう。脚が長くなっただけでなく、手前の足も大きくなっている。右足と左足の大きさが全く違うことに気づけば、それがレンズからの距離の違いによるものなので、広角側で撮ったことがわかる部分だ。
 他に目を向けると壁にある照明スイッチのパネル(ここにあることが似合わないと感じたのであまり写したくなかった)の写り込みも大きくなっていることが確認できるし、ドアの隙間からチラリと見える向こうの部屋も写り方が全く異なるのが判るだろう。左右両足の僅かな距離だけでここまで大きさが違ってくるのだから、何メートルも離れているところにあるものはさらに小さく写るし、部屋内の違った位置が写るので向こうの部屋を想像しにくくなるのだ。この焦点距離(画角)で撮るならこの場合はもう少しドアを開けた方がいいことになる。

 この2枚と前の2枚、同じカットで似たような写真4枚ではあるけど、こうして比較するといろんな違いが感じ取れたのではないだろうか。
 ここで私が作りたかった画は、前に書いた通り、この娘と写らないもう一人との関係。それを扉を使ってドラマティックな演出を加える。二つの部屋を繋ぐ扉。扉を開こうとする彼女。明かりと灯り...。
 だからここにある左の写真を私は撮ったので、作品として出すとしたらこの1枚。あとの3枚は私の中では作品としては公開しない写真だけど、違いを説明するために撮ったからあえて載せている。

 今回、撮影講習会の最初に皆さんに言ったことがある。
「私はこう撮りなさいといういうことは講習では言わない。それをしても同じような作品にしかならないから、まずは自由に撮っていただいて自分自身の作風として、どこをどうすると良くなるかの話をします。」と。
 だから講習中は私が撮るときでもここでこんなイメージを持って撮っているということは語らずにいた。ただ撮影しようとしている位置からはこんな画が観えてますっていうのは知ってもらいたかったので、ここから観てくださいと誘っていた。

 イメージを語りながら撮るのは作品撮りのときぐらいしかないので、興味のある方は作品撮りの見学をしてください。

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